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発話分析 - 1
2. 発話分析による心身状態評価法
   
塩見氏は,発話分析による脳状態の研究では,世界的 にも第一人者である。従来,発話音声にはカオスはないと思われていたが,塩見氏の 1998 年以降の研究によって,発話音声にはカオス成分が含まれており,カオス分析で得られる指数と脳の負荷レベルのあいだに相関があることがわかって きた。従来,心身状態の評価では,被験者に直接装置を付けて脈拍,血圧,呼吸,発汗,脳波などを測定する必要があったが,発話音声を使う方法だと,接触す ることなく被験者の心身状態をモニターすることができるので,地上から離れた宇宙空間でも利用できる可能性がある。

塩見氏の発話分析の手法にはつぎのような特徴がある。
  • 発話音声のカオス分析によって,心身の状態を数値的に評価することが可能。具体的には,発話音声の波形を,ある短い時間間隔をあ けた2点で比較することによって,カオスの指標であるリアプノフ指数を計算することができる。カオス分析を用いると,フーリエ分析(周波数分析)で はわからない 変化も検出することができる。
  • サンプルとして使う音声データの音質はテレビ放送程度で十分である。
  • 発話音声を分析するだけなので,非接触で心身状態を評価することができる。
  • カオス分析は,日本語・英語などの言語によらない。また,性差,年齢差,個人差が小さいので,対象ごとの調整が不要である。
当初,この手法は疲労度の評価などに応用できると考えられたが,塩見氏の最近の研究では,さらにつぎのようなことが明らかになった。
  • カオスの指標であるリアプノフ指数を得るためには数分の音声サンプルが必要であったが,代わりにノイズ成分を考慮に入れたセレブ ラル指数を用いるこ とにより,2〜3秒の短い音声サンプルでも分析できるようになった。また,感度が飛躍的に(約3桁も)向上した。
  • 計算は,リアルタイムでなければパソコンでも十分に行える。
  • <>研究の当初は脳の何を見ているのかわからなかったが,脳内に発生する雑音を見ていることがわかってきた。 具体的には,本人の自覚以前に疲労を発見する,アルツハイマーの初期段階を検出する,などの応用が期待できる。さらに,脳につぎの ような負荷がかかっているときにも指数が大きくなることがわかってきた。 すなわち, (1) 嘘の証言をしているなど緊張状態にあると数値が上がる, (2) 自分が話している内容をディレイをかけてフードバックさせると,たいへん話しにくくなり数値が上がる (次ページ図参照), (3) 耳を押さえて,ふだんとは違う自分の声を聞きながら話すだけでも数値が上がる,など。
とくに,疲労を早期発見できることから,最近,航空機パイロットの疲労度チェックのために実際に使われ始めたということである。


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