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発話分析 - 2
3. 応用の可能性
   
塩見氏らによれば,発話のさい大脳内のウィルニッケ野とブローカ野のあいだで信号が交換されているが,この信号に対して脳の他の部位からの擾乱があると, 発話音声にカオス性とノイズが加わると考えられるということである。 下図は,被験者に対して,本人の朗読音声のカオス成分の指標(セレブラル指数)を,フィードバックがないとき と,タイムラグをつけてフィードバックさせたときで比較したものである。自分の声のフィードバックがあるとたいへん話しづらくなるが,このとき指標が大き く上昇していることがわかる。

図
塩見格一,高岡美智子:「発話分析から考える脳機能モデル」(preprint) より

発話のカオス分析による心身状態の評価法は,疲労や緊張など,脳に負荷がかかっている状態を精度よく検出することができるので,航空機関係ではすでに実用 化が始まっている。発話音声のカオス成分は,上で述べたような脳の擾乱と深い関係がある。この方法によって検出できる心身状態は,今のところストレス状態 や緊張状態を中心とした限られたものであるということである。

しかし,発話分析法は,総合的に脳機能状態をモニターできる可能性を秘めている。たとえば,感動したときは言葉を失ったりうまく話せなくなることがある が,このような状態も発話分析で検出できるのではないかと思われる。 手法の高精度化など,今後の発展によっては,リラックスしている,心地よいなどの状態も知ることができるようになる可能性もある。 また,発話分析の手法はすでに,たとえば宇宙飛行士が微小重力環境に適応したか否かの評価に応用できるレベルに達しているのではないかと思われる。

発話のカオス分析による心身状態の評価法は,被験者に接触する必要がないこと,短い発話をマイクロフォンなどで収集する以外に特別な装置を必要としないこ とか ら,有人宇宙開発への利用が容易であると思われる。今後,発話 分析の精度がさらに向上し,微少重力環境でのさまざまな局面における宇宙飛行士の心身状態を客観的に評価する方法として広く利用されるようになることが大 いに期待できる。



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