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心の場 - 6
6. 今後の展開と課題


前項に設定した実験テーマは,おもに視覚を中心にしたものであるが, 当然のことながら,音,音楽等の聴覚や嗅覚等の知覚を総動員しなければならないだろう。 多様な個性,感性はまさに無限であるが,どこかに人間の普遍としての感性の姿が見られるかもしれない。

(1) の感覚を純粋に引き出すための「無の空間」においては,すべての色彩の無段階な色調等から,オーロラのようにひとつの空間の中に時々刻々と移りゆく色彩が 動きをもって感じられるもの。色の持つ質感(光の色,顔料のようなツブツブ感,また水の中の感覚によるものなど)も重要なもののひとつだと思われる。

(2) 「自然」との対話を通したものも,提案はおもに視覚のみを通したものであるが,(1) と同様に知覚すべてに関わる問題であることはいうまでもない。

ひとつの提案として浮かび上がったものは,地球の環境の中の自然,つまり,岩,光,水,風,火,草,木,花,動物等,あらゆる生命体を「心の場」の内部空 間に上下左右,遠近の距離感を度外視して配置し同時共存させる。自由で開放された「新次元の場」を設定し,これを試みる(図A)。これは,写真や画像を使 用したものでなく,あくまでペイントによる表現手段をとることとする。"non-dimension space painting" 「開放された次元における宙間絵画」と呼ぶべきか。このような「心の場」の中で,芸術表現による自然との対話がどのように人間の感性に作用し影響を与える かを考察する。図B では,図A の要素に加えて造形された自然物(木,花,岩)等を内部空間の中に自由に移動させながら配置し,微小重力空間の中で自分自身の宇宙庭を創作する。 MIND GARDEN 創作の提案である。

Fig. A
図A

Fig. B
図B

これらの提案−感覚や感性の変容の検討は,バーチャルな実験ではほとんど意味をなさない。実際面を通しての宇宙環境において行われる行為によってのみ意義 深い結果が得られることから,宇宙ステーション内での宇宙飛行士との共同作業は不可欠である。最終的には,実践を伴った内容による具体的提案が必要である が,宇宙へ運搬可能なコンパクトに収容できる「心の場」の実際のモデルはまだ制作中であるし(ポリウレタンによる 1/8 スケールモデル),さらに他の素材や構造についても検討されねばならない。

また,「心の場」を使っての地上実験においてはモニターによる感傷的な感想によるデータ収集を主体に行っているが,まったく不充分であり,何らかの科学的 なデータが得られないものかと検討中である。現在,京都大学大学院工学研究科精密機械工学専攻,井手研究室の協力を得て,(1) において,心拍変動の測定による自律神経機能の変容について考察中である。また,国土交通省電子航法研究所,塩見格一氏の発話分析研究を,宇宙環境での KOKORO Project 「心の場」で実際に応用すれば,宇宙,地上双方においての感覚の差異が検証できると思われる。


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